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名古屋地方裁判所 昭和39年(ワ)2号 判決 1965年7月19日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者双方の求める裁判

原告「被告は原告に対し金五五七、五九四円及びこれに対する昭和三六年四月一四日以降支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行宣言。

被告「主文同旨の判決。」

第二  当事者双方の主張とこれに対する答弁

一  請求原因

1  原告は訴外山本製薬株式会社に対し一、三〇〇、〇〇〇円の貸金債権(但し弁済期日は、内金三〇〇、〇〇〇円については昭和三二年一〇月三〇日、内金一、〇〇〇、〇〇〇円については昭和三三年三月三〇日と定められていた。)を有し、右債権担保のため訴外山本通義(以下単に山本という。)所有の別紙目録記載の不動産(以下本件物件という。)につき名古屋法務局昭和三二年八月一四日受付第二二六三三号による順位第三番の抵当権を有していた。原告は昭和三五年六月二四日右抵当権に基き名古屋地方裁判所に競売の申立をなし、同事件は同庁昭和三五年(ケ)第一一八号事件として係属した。右競売事件において被告は第二番抵当権者として一、一七一、三四七円の債権を有する旨主張し、配当要求をし、原告は元金一、三〇〇、〇〇〇円及び最後の二年分の損害金一五六、〇〇〇円合計一、四五六、〇〇〇円の配当を求めたところ名古屋地方裁判所は被告に対し一、一二〇、〇〇〇円、原告に対し四四六、七九七円を配当する旨の配当表を作成した。

2  しかしながら被告の主張する債権は存在しないので、原告は右配当表に異議を申立、更に被告を相手どり名古屋地方裁判所に対し配当異議の訴を提起し、同事件は同庁昭和三六年(ワ)第五八一号事件として係属していたところ、同裁判所は原告の請求を全部認容し、「前記配当表を変更し、被告に関する部分を取消す、原告に対する配当額を一、〇〇九、二〇三円とする」旨の判決をした。ところで右のような判決がなされたのは、原告が右配当異議訴訟の訴状請求の趣旨欄に「原告に対する配当額を一、四五六、〇〇〇円とする」旨記載すべきところを誤つて「原告に対する配当額を一、〇〇九、二〇三円とする」旨記載したためで、右のような明白は誤謬を看過した原判決は不当なので、原告は名古屋高等裁判所に対し「原判決中、控訴人に対する配当金一、〇〇九、二〇三円とあるのを取消し、右配当金を一、四五六、〇〇〇円と訂正する、」旨の判決を求めて控訴したところ、昭和三八年一〇月二八日控訴却下の判決があり原判決が確定した。そこで名古屋地方裁判所は右判決に従つて昭和三八年一一月下旬頃までに原告に対し一、〇〇九、二〇三円、被告に対し五五七、五九四円を配当した。

3  しかしながら前記のとおり被告は本件物件の競落代金より優先配当を受ける何等の権利も有しないにもかかわらず本件競売事件において第二番抵当権者として一、一七一、三四七円の債権を有する旨主張し結局五五七、五九四円の配当を受けたものであり、その結果原告は一、四五六、〇〇〇円の優先債権のうち一、〇〇九、二〇三円の配当しか受けられず、差引四四六、七九七円の損害を受けた。すなわち被告は法律上の原因なくして五五七、五九四円を不当に利得し、原告は四四六、七九七円の損害を受けたので原告は被告に対し民訴法六三四条により右不当利得金のうち四四六、七九七円及びこれに対する配当期日の翌日である昭和三六年四月一四日以降支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

4  仮に以上の主張が理由のないものであるとしても、被告は前記のとおり本件物件の競落代金より優先配当を受ける何等の権利も有しないにもかかわらず、これあるが如く装つて名古屋地方裁判所に対し一、一七一、三四七円の配当要求をし、五五七、五九四円の配当を受けた不法行為により、本件物件の所有者である山本の本件競売による剰余金交付請求権を侵害し同訴外人に五五七、五九四円相当の損害を与えた。

よつて山本は被告に対し五五七、五九四円の損害賠償債権を有するところ、原告は山本に対し現在左のとおりの合計六八七、二九七円の債権を有しており、山本は現在無資力なので、山本に対する右債権を保全するため、山本に代位して被告に対し右損害金五五七、五九四円及びこれに対する昭和三六年四月一四日以降支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

1  本件競落金より優先配当を受けることができなかつた元本四四六、七九七円

2  元本三〇〇、〇〇〇円に対する弁済期日の翌日である昭和三二年一〇月三一日より昭和三六年四月一五日までの約四一月分の年六分の割合による遅延損害金より右同日優先配当を受けた二年分の損害金を差引いた一七月分の損害金二五、五〇〇円

3  元本一、〇〇〇、〇〇〇円に対する弁済期日の翌日である昭和三三年三月三一日より昭和三八年一〇月三一日までの約六七月分の年六分の割合による遅延損害金より昭和三六年四月一五日優先配当を受けた二年分の損害金を差引いた四三月分の損害金二一五、〇〇〇円

二  請求原因に対する被告の答弁並びに主張

1  請求原因第一項の事実は認める。同第二項の事実のうち原告が本件配当表に異議を申立、配当異議の訴を提起し、その主張の日時にその主張のような第一、二審判決があり、第一審判決が確定した結果原告に対し一、〇〇九、二〇三円、被告に対し五五七、五九四円の配当があつたことは認めるもその余は否認する。第三、四項の事実は全部否認する。

2  本件配当は原、被告間の名古屋地方裁判所昭和三六年(ワ)第五八一号配当異議事件の確定判決にもとずきなされたものであるから、原告は該判決により拘束され被告に対し既に配当された金員について不当利得の返還を請求することは許されない。

第三  証拠(省略)

別紙

目録

名古屋市西区松西町二丁目一一五番地

一、宅地  九五坪

名古屋市西区松西町二丁目一一五番地上

家屋番号 同町一一五番

一、木造瓦葺平家建工場

建坪三五坪五合

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